小売電気事業者としての「容量拠出金」の考え方について

全ての小売電気事業者は、電気事業法によって供給能力の確保が求められています。供給能力の確保には、供給電力量(kWh)の確保だけでなく、中長期的な供給能力(kW)の確保が含まれています。

「容量市場」とは、電源投資に関する投資回収の予見性を高めることで、供給力不足、電気料金の高止まり、調整電源を確保できない等の問題に対応し、中長期的な供給力を確保するための手段と位置づけられています。

 

容量市場では、国全体で必要な供給力(kW価値)を市場管理者である広域機関(電力広域的運営推進機関)がオークションで一括して確保します。国で必要な供給力は、小売電気事業者を含む全ての電気事業者が毎年提出する供給計画等に基づいて算定されます。国全体で確保した供給力への対価(容量確保契約の金額)は、供給能力を確保すべき小売電気事業者と一般送配電事業者が、次のように「容量拠出金」として費用負担することになります。

 

◎小売電気事業者が負担する容量拠出金:需要シェアの比率に応じた金額

 小売事業に係るピーク時のkW実績、オークションの約定価格、経過措置価格等を基礎として算定されます(たとえば、2024年度のオークションの約定価格及び経過措置価格の総平均価格は、9,534円/kWです)。

 算定方法は次の通りです。

 ①全国の容量拠出金の総額をエリア別のH3需要比率に応じ、各エリアに配分

 ②上記①の金額から、経過措置対象電源の控除額と一般送配電事業者の負担額を引く

 ③上記②の金額を、エリア別の小売電気事業者の負担総額÷12か月

 ④上記③の金額×各社の配分比率=小売電気事業者ごとへの請求額(月額)

 つまり、小売電気事業者への請求額(月額)=
 エリア別容量拠出金(H3需要比率)-(経過措置電源の控除額 + 一般送配電事業者負担額)÷12か月 × 各社の配分比率
 となります。

 ※「H3需要」は、供給計画における各エリアの各月最大3日平均の電力です。

 ※「各社の配分比率」は、前年度の4~9月分は夏季ピークの実績(7~9月)、10月~翌年3月分は冬季ピークの実績(12月~翌年2月)を基準として算定し、実需給年度のシェア変動に応じた補正をした比率です。

 ※消費税の課税対象となります。

 

一般送配電事業者が負担する容量拠出金:託送料金に参入されている部分(H3需要×X%)

 現在の供給計画では、発電所の計画補修などによる停止分の供給力を減少して集計することで、必要な供給予備力(H3需要の108%)の確保が確認されています。

 

負担の割合は、託送料金査定の考え方によって適宜見直しが行われます。

 

容量市場管理者からの小売電気事業者への費用の請求は、小売電気事業者が発電事業者などと相対契約を結んでいるか否かに関わらず行われますので、小売電気事業者は相対契約の支出に加えて、容量市場への支出も発生することになります。一方、容量市場で落札した発電事業者などは相対契約による収入に加えて、容量市場からの収入を得ることとなります。そのため、既存の相対契約については制度導入の趣旨を踏まえ、適切に見直す必要があります。

 

請求額の算定は、小売電気事業者や容量提供事業者の実績集計が必要となるため、1回目の請求(4月分)は実需給年度の7月となり、以降、月次請求となります。容量拠出金の支払いは、メインオークションの4年後となる実需給年度からの開始となります。

 

 

 

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