小売電気事業者の登録とは?その登録要件とは?

小売電気事業者の登録とは、電気事業法によって運営が規制されている電気事業の1つ「小売電気事業」を営む場合に必要なライセンスです。

 

小売電気事業とは、電気の小売り供給(一般の需要に応じて電気を供給すること)を行う事業を指し、主に次のような販売先へ電気を小売り供給することをいいます。

 

・特別高圧需要家(電圧が7,000V超、受電電圧が2万V以上などの、大規模な工場やオフィスビル、空港、商業施設など

・高圧需要家(50~2,000kW未満を使用する、法人、工場、庁舎や小中学校等の公共施設など

・低圧需要家(50kW未満を使用する、個人事業主、一般家庭など

 

また、その小売りを行う電気の供給能力は、主に次のいずれかの方法で確保する必要があります。

 

A.自社電源(水力、火力、原子力、太陽光や風力などの自然再生エネルギー、ほか)

相対契約(1社で契約する他、BG(バランシンググループ)に加入する方法など)

卸電力取引市場による調達(日本卸電力取引所(JEPX)による調達)

 

なお、自社電源や相対契約において太陽光や風力の発電による小売電気事業を行う場合、その発電量については調整係数による算出が必要となります。

 

 

小売電気事業者として登録(ライセンス)を受けるためには、主に次のような要件を満たす必要があります。

 

◎電気事業法または電気事業法に基づく命令の規定に違反し、罰金以上の刑の執行または執行猶予期間の終了日から2年を経過しない申請者(法人の場合は役員など(相談役、顧問を含む))ではないこと

 

◎小売電気事業登録を取り消され、その取消し日から2年を経過しない申請者(法人の場合は役員など(相談役、顧問を含む))ではないこと

 

◎小売り供給先の需要に応じるための電気供給能力を確保できる見込みがない者、その他の電気使用者の利益保護のためには適切でない者の、いずれにも該当しないこと

 

◎原則として、直近年度の決算で経常損失などがないこと

 ※直近決算で経常損失がある場合や新規法人で決算期未到来である場合でも、ドラフトの提出(事前審査)は可能ですが、登録を受けるためには小売電気事業の開始後3年以内に黒字化できる、より具体的な事業計画書の提出などが必要となります。

 

◎広域的運営推進機関(広域機関)に加入(仮加入)する手続きを行うこと

 

◎自社電源で供給能力を確保する場合、次のことが明示できること

 ・設備の名称・所在地・写真・出力

 ・送配電事業者との接続契約書など

 ・(自然変動型電源(太陽光・風力・揚水)の場合)調整係数などを考慮した供給力確保見込み量

 

◎相対契約で供給能力を確保する場合、自社が卸受けする相手方との合意を示す資料を明示できること

 ※相手方との合意を示す資料とは、契約書(ドラフトも可)または覚書、打合せの会議録、メールでのやりとりの記録などです。

 

◎卸電力取引市場で供給能力を確保する場合、卸電力取引市場の取引会員規程に適合していること

 

◎販売地域や需要家数に見合った体制(人員配置など)になっていること

 

◎需要家に対する供給契約説明義務・書面交付義務が適切に遵守される体制になっていること

 

◎需給管理業務の実施体制が定まっていること

 

苦情など問合せの連絡先、担当部署、責任者が定められていること

 

◎小売電気事業を行う地域の一般送配電事業者(電力会社)からの託送供給などの契約やスイッチングなどの実務について対応すること

 

◎需給調整業務(計画値同時同量の義務)を遵守すること

 ※小売電気事業者は需要調達計画を策定し提出する必要があり、計画値と実際の需要量が異なる場合は、一般送配電事業者と差分の電力量をインバランス料金で精算する必要があります。

 ※複数の小売電気事業者でBGを組成し、その代表契約者が計画策定やインバランス料金精算などを行うこともあります。

 

◎容量市場が開設された後、小売電気事業者は市場管理者(広域機関)に拠出金を支払うこと

 ※小売電気事業者には供給能力確保義務が課されているため、事業開始後は容量市場を通じて広域機関に対し、自社の小売事業に係るピーク時のkW実績・オークションの約定価格・経過措置価格などを基礎として算定される、容量拠出金の支払いを求められることになります。

 ※ちなみに、2024年度のオークションの約定価格及び経過措置価格の総平均価格は、9,534円/kWです。

 

◎小売電気事業者として登録した後は、次のような各種報告などを提出すること

 ・発受電月報(毎月の提出)

 ・電力取引報(情報ごとに月次、四半期及び年次の周期の提出)

 ※詳しくは「小売電気事業者の登録後に必要となる手続きとは?」をご覧ください。

 

これらの要件に適合しているかどうかの審査は、小売電気事業登録に必要な書類をベースに行われます。

 

 

よしひろまごころ行政書士事務所では、全国対応で、小売電気事業者の登録申請、発電事業届出アグリゲーターの特定卸供給事業届出などの電気事業に関する手続きを代行・サポートしています。お気軽にお問合せください。