【施行前】技能実習制度の廃止とともに創設される、育成就労制度(育成就労ビザ)とは?

2024年6月に「出入国管理及び難民認定法及び外国人の技能実習の適正な実施及び技能実習生の保護に関する法律の一部を改正する法律(改正入管法)」が公布されたことにより「育成就労制度」が創設されます。

この改正法は2027年までに施行される見通しであるため、この制度による育成就労ビザの手続きは、その施行以後に行える見込みです。

 

育成就労制度は改正入管法による技能実習制度(技能実習ビザ)の廃止とともに創設されますので、現在の技能実習を行っている方には3年間の移行期間が予定されており、新制度への完全移行は2030年頃になると予想されています。

 

このように、育成就労制度は技能実習制度の代わりとして機能すると考えられますので、現在の技能実習制度と、改正入管法施行後(育成就労制度の開始後)との違いについて、以下にご案内をさせていただきます。 

【技能実習制度(現在)】

◎在留資格(ビザの種類):「企業単独型」と「団体監理型」のそれぞれで、1号~3号まであります。

 ・技能実習1号(企業単独型は「イ」、団体監理型は「ロ」):入国後1年目の技能等を修得するための活動

 ・技能実習2号(上記と同じ):入国後2年目・3年目の技能等に習熟するための活動

 ・技能実習3号(上記と同じ):入国後4年目・5年目の技能等に熟達するための活動

 

◎対象の職種・分野厚生労働省の「技能実習制度 移行対象職種・作業一覧」の通りです。令和6年8月1日時点では、90職種166作業と定められています。

 

◎受入れ対象の外国人の方の要件:対象職種を従事または学習した経験、入国後講習、介護職は日本語能力N4以上

 ※介護職以外の職種の日本語能力も、N4(基本的な日本語は内容が理解できるレベル)が目安とされています。

 

◎受入れ方法:「企業単独型」は、監理団体を経由せず、日本の企業が直接、海外の現地法人や合弁企業、取引先企業の常勤職員を受け入れるものです。「団体監理型」は、非営利の団体(事業協同組合、商工会など)が「監理団体許可」を取得し、傘下である事業者(組合員、商工会会員など)で技能実習を行う方法です。

 

◎受入れに必要な手続き:監理団体許可申請(団体監理型の場合)、技能実習計画の認定申請、在留資格認定証明書交付申請(技能実習1号ビザの取得による海外からの受入れ)、実習実施者の届出

 ※この他、監理団体の事業報告書・実習実施者の実施状況報告書の提出(各年1回)などが必要です。

 

◎特定技能へ移行する要件:同職種に関連する技能実習2号を良好に修了していること

 

なお、転籍(育成就労実施者の変更)は育成就労制度と異なり、現在の技能実習制度では原則、行うことができません。

【育成就労制度(改正入管法施行後)】

◎在留資格(ビザの種類)「単独型」と「監理型」の2つの区分「育成就労」のみです。3年間の在留が認められます。育成就労ビザの取得後は、特定技能1号ビザへ移行することを想定されています。

 

◎対象の職種・分野特定技能ビザの職種・分野と、原則として同じになる見通しです(特定技能ビザは、介護、ビルクリーニング、工業製品製造業、建設、造船・舶用工業、自動車整備、航空、宿泊、農業、漁業、飲食料品製造業、外食業、自動車運送業、鉄道、林業、木材産業の16分野です)。

 なお、技能実習を行った職種・作業に対応する育成就労の受入れ対象分野がない場合は、育成就労で働くことを認めるよう予定されています。

 

◎受入れ対象の外国人の方の要件:日本語能力N5(基本的な日本語を、ある程度は理解できるレベル)以上

 ※経験要件や入国後講習の有無は問われませんが、育成就労実施者が育成就労計画に沿って必要な講習を行う必要があります。

 

◎受入れ方法:「単独型」は、監理団体を経由せず、日本の企業が直接、海外の現地法人や合弁企業、取引先企業の常勤職員を受け入れるものです。「監理型」は、非営利の監理支援機関(事業協同組合、商工会など)が「監理支援機関許可」を取得し、傘下である事業者(組合員、商工会会員など)で育成就労を行います。 

 ※季節的業務に従事させることを要する分野に限り「監理支援機関許可」を得た機関が労働者派遣などを行うことによって育成就労を行う方法があります。

 

◎受入れに必要な手続き:監理支援機関許可申請(監理型の場合)、育成就労計画の認定申請、在留資格認定証明書交付申請(育成就労ビザの取得による海外からの受入れ)、育成就労実施者の育成就労実施の届出

 ※この他、監理支援機関の監査報告書・育成就労実施者の実施状況報告書の提出(各年1回)などが必要です。

 

◎特定技能へ移行する要件:日本語能力N4以上、技能検定3級等または特定技能1号評価試験の合格

 ※受入れから1年以内に、育成就労外国人の方が技能検定基礎級等に合格する必要があります。

 

◎転籍(育成就労実施者の変更)に必要な手続き:監理支援機関による職業紹介などの措置、転籍先の育成就労計画の認定申請

 ※ただし、育成就労外国人の方の転籍前の企業での就労期間が1年以上(職種により異なる)で技能検定基礎級等の合格者、転籍先も同一業務区分であるなどの要件があります。


以上のことから、育成就労制度は技能実習制度から移行する内容の手続きになるといえます。ただし、監理団体許可を取得している監理団体も、監理支援機関になるためには改めて申請が必要となる可能性があります(外部監査人の設置が義務となります)。

 

 

よしひろまごころ行政書士事務所では、技能実習ビザの申請や監理団体許可申請、技能実習計画の認定申請、特定技能ビザの申請や登録支援機関の登録などをサポートしています。お気軽にお問合せください。